「今日はまだ時間早いから、食事はできないよ」
おっ、と・・いささか勇み足・・!カレー食いたくて来てみたけど、まだお時間早かったみたい・・。めっちゃ昭和トラディッショナルな喫茶「サイフォン珈琲nasu」。
やけに、喉が渇く。珈琲好きを標榜しておきながらアイスとは、私という半端な人間性が浮き彫りになってしまう。それでもアイスが欲しいのだ「アイスコーヒー」420円。
おもむろに、ず・ず・とん。と何かが鳴った。耳ではなく、身体に響くベース音。ジャズだ。店主がジャズをかけてくれたのだ。珈琲とジャズとカレー。ここでジャズについて語れば、私も村上春樹になりきれるだろうか?
ジャズと言えば、思い出すのが親父の出棺の事だ。もう24年も前のこと。
本人の遺言により、出棺の音楽はコルトレーンだった。風邪ひとつひいた事のないような、昭和そのものの頑強な親父が、ジョギング中に突然に、逝った。亨年四十八。
突然死だったのに、出棺の時にはジャズを、なんて遺言していたなんて、不思議なものだ
昭和な喫茶店でジャズを聴きながら、どうしてかそんなことを考えていた。二十四年前の葬儀の情景が、クラシックでクロームな追憶に呑まれてゆく。
恐らくは、マスターも親父と同じ頃合いのお歳であろう。
カラコロン♪
「いらっしゃい」
やはり歳の頃、アラ70くらいのシニア二人組の客が入ってきた。新聞片手に、野球の日本代表の話で盛り上がっている。あの二人にとって、やはりこうした昭和な空間は居心地が良いのだろう、と思う。
団塊世代と、そのジュニア。奇妙な相対性が、ジャズによって醸造されていくようだ。
2019年、時代は昭和から平成、そして令和となった。令和元年の京都の喫茶店で、こうしてジャズを聴きながら、親父を想い出していようなどとは。24年前の私には知る由も、ない。
いよいよ歳末、多忙を極めます。頑張りましょ
「サイフォン珈琲nasu」
11:30~19:00くらい 不定休