吉田東洋暗殺地から高知名物の尾長鳥の案内に導かれ、「武市瑞山殉節之地」へむかいます
切腹の場は南会所大広庭。その北カドに、板が敷かれ、板の上にムシロがのべられている。あたりはカガリ火が焚かれ、昼のようにあかるかった。「よいか。わしがよしというまでやるな」と武市半平太は短刀をとり、腹をくつろげ、しばらく気魄の充実してくるのを待ったが、やがて左腹の下部にずばりと突き立てた。
声は立てない。きりきりとそれを右へ一文字にまわしいったん刀をひきぬくや、こんどは右腹に突き立て、
やっ やっ やっ
と三呼叫び、みごと三文字に掻き切ってつぶせた。
年三十七。