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【走ることについて語るときに僕の語ること】に僕は友達をみる

村上春樹氏の小説で僕が特に印象的な作品が「羊をめぐる冒険」で、北海道を舞台とした作品として特に印象に残っています。その独特な世界観、この世から外れた異次元感、無音館みたいなものが怖くてとても印象に残っています。「1Q84」などでもそうですが、異次元の世界感みたいなものは村上氏の作品のひとつのパターンでもあるのかも知れませんね。

いわゆる「ハルキスト」のような、僕はそういう部類の読者では全然ないし、残念ながら読んだ作品だって数作品に過ぎないのですが、時々肩肘張らずに楽しく読ませていただいています。
そんな村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること」がとても面白く、読んでいて実にリラックスさせてもらえるような気がします。「走る小説家」としてランナーでもある村上氏、フルマラソンを走るなんて単なる健康づくりの範疇で出来るものじゃないし、そういう作家さんだという事を知らなかったので驚きつつ読んでいます。
そして、書かれている事に「解る!」と唸ってしまう箇所が多くあり、何て言うのか、失礼な話ですが「あっ、ここに友達がいた」という気分にさせてもらえるんです。
例えば、
「健康な自信と、不健康な慢心を隔てる壁はとても薄い」
とか、
「しかし残念ながら僕はもう若くはない。支払うべき代価を支払わなければ、それなりのものしか手に出来ない年齢にさしかかっているのだ」
とか、わかる~・・・、と自分の思いをうまく外に表現出来ない代弁をしてくれているようで、非常に気持ちが良いんですね。
僕は約10年ほど前から、ちょっと健康不安がちらつき始めた時があって一念発起してプールに通うようになりました。以来、自分で決めたこれだけは、という気概と、やはり好きなんでしょうね水に浮く事が、走る事は出来ないのですがずっとその生活スタイルを継続し続けています。とは言え、いくら好きで自分でやってる事だ、とはいえ仕事の後になかなか気がすすまない日も多く苦痛に感じる日も多い、葛藤も日常茶飯事なんですが、村上氏のこの作品を読んでいると「同じなんだな」と安心出来るような気がします。
「これぐらい走るのが当たり前のことなんだよ」と身体に申し渡すことだ。と村上氏は書いています。
「申し渡す、というのはもちろん比喩的表現であって、いくら言葉で言いつけたところで、身体は簡単に言うことを聞いてくれない。身体というのはきわめて実務的なシステムなのだ。時間をかけて断続的に、具体的に苦痛を与えることによって、身体は初めてそのメッセージを認識し理解する」
んん~・・・わかる~。。
方や毎年ノーベル文学賞候補にもなる世界的人気作家、方や凡庸の最下層に沈殿する名もなき中年。しかしその2つの人間が日々はっ、は、と悶絶しながら呼吸で自らの身体に指令を「申し渡している」のは同じなのであります。
哀しいかな、身の回りにはそうそう友達なんていないものなんでしょうが、作品を通じて一方的かも知れませんが「ここに友達がいる!」と思えるのは幸せなことだと思います。上記「ハルキスト」。単なる熱狂的なファンではなくて、彼の著作からその考え方や生活スタイル、つまりは生き方を学んでいるとすれば、もしかしたら僕も「ハルキスト」なのかもしれませんね・・??そうそう、僕もサンドイッチ、好きです(笑)

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