
町人姿の「道具屋」枡屋喜右衛門。ひと皮めくれば潜伏中の勤皇志士、古高俊太郎である。
近ごろは長州さまの御用で、お忙しそうやおへんか・・・。

新撰組の近藤勇が市中巡察中、江戸で顔見知りの水戸藩士・岸淵兵輔とばったり出くわし細い路地にある道具屋の話を聞く。新撰組が眼を光らせ始めた。蒸し風呂のような暑さの夜、新撰組が疾風の如く枡屋方を取り囲む。「枡屋喜右衛門、御用改めであるぞ」原田左之助が提灯をあげて叫ぶ。総勢二十余名。「ついに、来たか・・。」
風の強い日、洛中に火を放ち、その混乱に乗じて天皇を長州へ移す。これが古高らの恐るべきクーデターの計画であった。


同志の決死連判状を突き付けられたとき、さすがに古高は血の気を失った。否、古高捕縛にさほど期待を掛けていなかった新撰組の方こそ戦慄してしまったかも知れない。恐るべきクーデター計画。言語を絶する程の拷問。古高を梁に逆さづりにし、足の甲から裏にかけて撃ち込まれる五寸釘。それへ百目蝋燭を立てて火をともした。前川邸の蔵には今でもその時代の縄などが残ると聞いた。
古高はよく耐えた・・。しかし、朦朧とした意識の中でとうとう口を割ってしまう。「六月五日戌の刻・・同志集会・・」

「歳!木屋町へゆけ!」



池田屋惣兵衛、仰天、「お二階のお客様、御役人の御調べでございますぞ!」と叫ぶやいなや、近藤がその横っ面を力任せに殴りつける。
「あがれ。上だ」
同志が遅れて来たものだと思った土佐の北添佶磨。階段の降口で顔を合わせたのは近藤であった。あっ・・!っと思った瞬間、階段を駆け上がりながら北添を抜き打ち。ようや事態を把握した奥の間の連中、しかし・・!?刀が無い・・!やむなく小刀を抜き応戦。狭い部屋では小刀の方が有利という面もある。伝説の大乱闘、「池田屋ノ変」である。
「なんぞ、御用ですかな?」
敵が崩れた後の戦場稼ぎよろしく、卑怯この上ない。
「お引き取りください」
土方は新撰組の実力で買い切ったこの戦場に、どういう他人も入れるつもりもない。


古高俊太郎邸跡

前川邸

京都守護職屋敷跡地

四国屋・丹虎跡地

池田屋跡地
