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新撰組・斎藤一の語りが聴ける小説

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いわゆる浅田次郎先生の「新撰組三部作」のひとつ、「一刀斎夢録」を読んだ。面白かった。
そもそも私が幕末ファンになるキッカケが浅田先生の「壬生義士伝」であり、幕末の取っ掛かりが新撰組という強烈な「ショック」だったので当然と言えば当然だが、やはり浅田先生の描く新撰組は面白い。私には浅田先生が描く剣というものが最も恐ろしく、最も冷涼なイメージを受ける。今の私達には解るはずもない究極に高めた剣士の精神状態を教えてくれるかのような作品に、まさに読者は「梶原中尉」の立場になり話に引き込まれていってしまう。先生の小説の得意パターン?として、回顧して当時にタイムトリップしていくような流れが私には心地よくフィットし、読んでいて酔わされてしまうようだ。もうひとつ面白いのは、この作品では龍馬を暗殺したのは斎藤一とされ、それをあとを付けて確認していたのが見回り組の連中、ということになっている。市村鉄之助の描き方といい、いやはや、作家の創造力とは本当に凄いと思う。えてして歴史ファンたるや、その趣味が高じていくにつれて史実がどうであったか、に傾倒していくように思われる。もちろんそれはそれで良いのだが、想像する楽しさ、興味を忘れてしまうのであればそれはそれで寂しい話だと思う。卓越した作品の裏には作者の膨大かつ確かな知識があってこそで、だからこそ我々はベースとなる史実と創作とのグラデーションを楽しめるのであろう。その階調表現がとろけるような見事な作品に、我々幕末ファンは酔わされるのである。しかしながら、浅田先生は本当に斎藤一が好きなんだなあとつくづく思う作品だった(笑)。